本当の自分とは
バサァァーーー
自分が散ってゆく。
僕は自分を探している。
僕は自分を磨いているのさ。
こうやって風の強い日には外に出て、自分を見つけようとしているのさ。
この中に、この中に本当の自分がいるのではないかと思いながらね。
僕は一週間しか学校という施設に行ったことがないんだ。
教室に入れば、たくさんの僕が飛び散らかってしまって掃除をする人たちに迷惑をかけてしまうし、プールに入れば、もうそのプールには誰も入れないよ。汚れちゃってね。授業中に取ったメモも、どれがどれだかわからなくなってしまうしさ。
そんなことがあってさ、僕は学校には いれないんだ。
だからこうして、僕は僕を飛ばしていくんだ。
バサァァーーー
かれこれ10年以上かな。
君は今おそらくこんな疑問を持ったんじゃないかな。
「それってなくならないの?だって日に日に飛んでいくんでしょ?」
僕だって初めはそう思っていたよ。あと何日、あと何日僕は僕を飛ばしたら、本当の僕が現れるんだろうってね。
だけどこの僕は減るだけじゃないんだ。増えることもあるんだ。
どんなときだろう。例えば嫌なことがあったときとか、緊張したときとか、不安になったときとか、気づくとぼぉわぼぉわって増えているんだよね。
それに気づいたときは、ものすごくがっかりしたよ。
だって「いつになったら本当の僕が現れてくれるんだろう。」って毎日考えてたのに、これじゃいつになっても本当の僕は現れてくれないじゃんか。
でも、現れてくれないことに悲しむと、またぼぉわぼぉわって増えちゃうからさ、無限ループみたいな?
もう受け入れたんだよね。
これが僕なんじゃない?ってさ。
「この中に本当の僕がいるんじゃなくて、これが、これ自身が、僕なんだ」って。
そしたらさ、体じゅうにまとわりついていたたくさんの僕がしゅわしゅわしゅわぁって剥がれ落ちたんだ!
なんていう物語の主人公的展開は起こらなかった。
だって僕だからね。僕は主人公になるような人じゃない。
でもそれでいいんだ。それでいいって思えてることが、幸せなんだ。
【作者より】
いかがだったでしょうか。
この企画はボードゲーム「DiXit」のカードに、こっぺが背景となるストーリーを描いていくというものです。
趣深いと思っていただけたら幸いです!
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この物語はフィクションです。