永遠の宝 オーシャントーチ
オーシャントーチ。それは世界中の海賊たちが探し求める宝。
そのトーチは昇りゆく朝日よりも明るく、どんなに強い風が吹いても、どんなに激しい雨が降っても、どんなに水に沈めても、決して消えない伝説のトーチだという。
そして現在そのトーチは地球の深奥、海の底深くに眠っているらしい。
その伝説の宝に思いをはせるひとりの少年がいた。
僕はホービィ。学校の成績や足の速さで1番を取ることはできないけれど、唯一誰にも負けない自信があるものがある。それは、好奇心さ。僕の、この溢れんばかりの好奇心をせき止めることができる人は一人もいないね。
それで、僕は世界中の伝説を探しているのさ。
だけどなかなかそれを手に取るのは難しくてね、いまだに伝説をこの手で確かめられたことはないんだ。
そして今日、僕はこのお宝に目をつけた。
海に眠りし伝説、「オーシャントーチ」にね。
「びゅう」
風が背中をおす。
冷たい、冷たい風だ。
今は夜、大海原の表面を、僕は小舟で浮かんでいる。
オーシャントーチを探すのに絶好の時間は夜だ。僕はそう思った。
なぜならば、オーシャントーチは水中でもなお輝いていて、夜の暗い時間ならば見つけるのがたやすいからだ。
しかし、海賊たちも同じことを考えているらしく、あたりにはうようよ海賊船が浮かんでいる。
目的地はない。
僕は風のナビに身を任せるだけでいい。
理由はないが、僕はそう信じている。
風にあおられ、海に揺られること約3時間。
あたりがなんだか明るい。
「夜明け・・・・ か」
僕は、ひとりだけの船の上でそうつぶやき、時計の首飾りを見た。
3時17分。
ん?日が昇るにはまだ早い。
まさか太陽、今日はお母さんに はたき起こされたのか?いつもちゃんとタイマーかけているのに、おかんが時間間違えて起こしたんか?
いやいや、そんなわけはない。
時差を加味しても、太陽はまだ寝ている。
「は!まさか!」
僕はそう思った。オーシャントーチ!今ここに、僕の前に姿を現したのか。
荒ぶる心臓を左手で抑えながら、船から身を乗り出して海の底を見る。
「海が、 明るい」
そうに違いない。オーシャントーチがこの下にあるに違いない!
考える暇もなく、僕は海に飛び込んだ。
深く深く、海の底、漆黒の大地をめがけて潜る。
光の道しるべで、僕はそれを手に取った。掴んだのだ。
伝説の宝と溢れ出る興奮を抱えて、僕は海から顔を出した。
「ばしゃんん」
「やったぁーーー」僕はそう叫んだ。
しかし、周りが見えていなかったんだな僕は。
目がくらんでいたとでも言おうか。
あたりには、海賊船がたくさんある。
「ばきゅうん」
僕の体は撃ち抜かれた。
ぐぼぼぼぼぼぼぼ
沈んでいく、体が。
ぼくぼくぼぼbぅf
ううん。ここからは上からの、天国からの視点でお送りしよう。
あの後、オーシャントーチは無事に海賊の一族に回収された。
が、しかし、その一族は陸に到着するまでに撃ち落とされてしまい、トーチを海に沈めてしまう。
オーシャントーチは明るすぎて、目立ってしまうのだ。
僕も、きっとそのせいで海賊たちが集まってきてしまったのだろう。
そしてその一族を撃ち落した海賊がトーチを拾い上げると、今度は違う海賊がその海賊を撃ち落とすのだ。
トーチは再び海に潜る。
そんなことが繰り返され、朝になり、トーチの行方が分からなくなった。
またいつか誰かがそれを見つけるまで、いや、見つけたとしても、また同じエンディングをたどりそうだな。
だからオーシャントーチは、永遠の宝なのかもしれない。
永遠とは、ずっと在り続けることではなく、失いそうになったとき、それを取り戻し続けることなのかもしれないね。