Koppe’s diary

こっぺが思ったことを書いたり、物語を作ったりするぶろぐです。

鹿さんと猫  

 

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鹿さんと猫



ピタッ  ピタッ

 

ニャロはその日、この音で目が覚めた。

 

少し体を起こして、伸びをしてからまわりを見てみると、

 

床に濡れている所があることに気づく。

 

ピタッ  ピタッ  ピタッッ

 

そして上から、何かがたれているらしい。

 

ニャロが見上げると、そこには泣いている鹿の飾り物があった。

 

これは、ここの家主であるセプラおばあさんが、好んで飾っているものだった。

 

「鹿さん 鹿さん どうして泣いているの?」

 

ニャロが心配して話しかけます。

 

しかし、鹿は口を動かそうとはせず、目も正面を向いたままでした。

 

 ピタッ  ピタッ  ピタッッ

 

しずくがたれる音だけが響きます。

 

返事をくれないので、ニャロはどうしていいか分かりません。

 

ちいさな頭のなかで、いろいろなことに思考をめぐらせます。

 

すると、鹿はおもむろに口を開きました。

 

「悲しいんだ。君はまだ子猫だ。ひとりじゃなにもできない。それに、今は冬だ。家の窓もきっと閉まっている。」

 

ニャロは、鹿が何を伝えようとしているのか分かりません。

 

鹿は続けます。

 

「君もいつか 死んでしまう…」

 

ニャロは、なぁんだそんなことか。とほっとしてこう言います。

 

「そんなことは、分かりきっているでしょう?」

 

鹿はさらに続けます。このときも顔は正面を向いたままです。

 

「たしかに、分かりきっている事実だ。だが、今までは覆われていて、見えなかったのかもしれない。」

 

鹿がまた意味ありげなことを言うので、ニャロは疑念の表情を再び浮かべました。

 

すこしの沈黙があったあと、寝室のほうから目覚ましの音が聞こえてきます。

 

チリリリリン チリリリリン チリリリン

 

ニャロはすこし立ち上がり、首を伸ばして、寝室とつながる廊下のほうを見ます。

 

「セプラおばあさんが来るよ。

鹿さん 涙を拭わないとおばあさんに心配されちゃうよ。」

 

鹿はゆっくりと目を閉じました。やりきれないという表情でした。

 

目覚ましが、再び鳴ります。

 

チリリリリン チリリリリン チリリリン

 

ニャロは思います。あれ、おかしいな セプラおばあさんはいつも目覚まし1度で起きるのに。

 

目覚ましは止まりません。

 

何があったのだろうと、鹿さんのほうを見ると、

 

鹿さんの閉じた目の隙間から、涙が滲み出ていました。

 

ピタッ  ピタッ  ピタッッ  と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【作者より】

いかがだったでしょうか。

この企画はボードゲーム「DiXit」のカードに、こっぺが背景となるストーリーを描いていくというものです。

本作が第一回目なのですが、朝にランダムに引いたカードについて書くので、いきなりダークな内容になってしまいました(o_o)]]

これからも毎日、「DiXit」の不思議な世界観の物語を創造していくので、

面白いと思っていただけたら幸いです。

 

 

「DiXit」についてのこっぺの記事はこちら

 

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